ダーク&ノイズ
それを聞いて、もっとも胸をなでたのは琢己だった。


「よかった……」


そしてそのまま草むらに倒れこむ。自分でも気づかないほど消耗していたのだ。緊張が解けたとたん、どっと疲労感が襲ってきた。


恭一も大きく息を吐いた。

気をゆるめて空を仰ぐと、木々の間から星が見える。


(やっと終わったか)


達成感がようやく湧いてきた。


(すごいな、やっぱり)


改めて佐々木の能力に感嘆した恭一は、ぼんやりと目線を向けた。



しかし、術を終え、立ち上がる佐々木の姿が二重に見える。


メガネをずらしてそれを確認した恭一の顔が、驚愕の表情に変わった。


(なんで、こんなとこに──)


思わず立ち上がる恭一。



その視線の先で、佐々木の膝が落ちた。


「佐々木さん!」


悠美と琢己もその目を見開いた。


信じられないという表情を見せる三人の前で、そのまま倒れこむ佐々木。その背後に何かがいる。

噴き出す血を浴びながら薄く笑う女。


その手は血にまみれ、鈍く光るナイフが握られている。


無残に髪の毛が焼け、顔は青いあざに覆われている。が、琢己と悠美も、それが誰だか瞬時に見抜いていた。

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