ダーク&ノイズ
「行かないで!」


悠美の伸ばした手はもう届かない。振り向いた琢己が、ゆっくりと頷いた。そして、二人は手を繋いだまま、ゆっくりと消えていった。


「そんな……」


はらはらと頬を伝う涙が止まらない。


気がつくと、お凛がいた場所には裕子が倒れている。しかしこれで終わったわけではなかった。


視界を宇野の影がふさぐと、目の前に銃口が鈍く光った。


「これで全部終わる」


冷たく言い放った宇野の指が、トリガーにゆっくりと力をこめてゆく。

「やめろ、そいつは関係ない!」

そう叫んだ恭一の声に、反応する素振りさえ見せない。


(琢己……また会えるかな)


恐れも悲しみもない。悠美は覚悟を決めて目をつむった。




月夜に響いた銃声が、尾をひいて山あいを駆け抜ける。

しかし、前のめりに倒れたのは宇野のほうだった。


恭一が目を走らせた先に、銃口から硝煙をくゆらせる内田がいた。


「馬鹿やろうが……」


苦渋の選択を一瞬で行った内田は、唇を噛み締めてそう言い捨てた。




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