ダーク&ノイズ
『……それでな、その音は村人が誰一人おらんくなるまで続いたということじゃ』

その祖母の話には続きがある。

お凛のこもった大木の下のほら穴で、藁人形の中に名前を書いた紙を入れて壁に打ち付けると、その書かれた名前の相手が必ず死ぬというものだ。


何のことはない。ふたを開けてみれば、昔はどこでも見られた呪いの藁人形の儀式だ。そこにお凛の呪いを重ねて信憑性を高めたものだろう。

それに──

オカルトスポットとして名高いその神社は、この近辺の住人にとっては肝試しの定番コースとなっている。

悠美も例外ではなかった。小学生の頃に友人らと何度か行った事がある。


その大木は確かにあった。


しかし肝心のほら穴はどこにも無く、あの話は作り話だというのが定説になっていた。

それでも毎年あの木に藁人形を打ちつける人間が絶えない。

その呪力を授かろうとする者の仕業なのだろう。

毎年見つかり学校で騒ぎになるのだが、それによって呪い殺されたという話は聞かなかった。



(やっぱりやめとこうかな)

例え呪いの儀式を行ったとしても、その効果が期待出来ないのであれば、わざわざこんな怖い思いをしてまで行くこともない。

真っ暗な一本道で立ちすくむ悠美は思いとどまっている。あんなに小さく見えた山が、今は畏怖を伴ってそびえて見える。

(どうしよう……)

その迷いを断ち切るように、突然腰に異様な感触が走った。

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