ダーク&ノイズ
前に進めようとする足が小刻みに震えている。

持ち出した道具を入れたコンビニの袋が、静まり返った夜道に大げさに響き、見えない何者かに気づかれるのではないかという想像に怯えた。

それでも拒否しようとする本能を抑えこんで、悠美の足は一歩一歩山へと向かった。

“登山口”と書かれた薄汚れた看板が見えると、ハイキングコースを描いた看板の立つ小さな広場に出る。

いわゆる登山のための小さな集合場所だ。

目を落とすと小さな立て看板がある。

ペンキが剥げて、顔の半分を削り取られた子供が、笑顔で“まむしに注意”と警告していた。

その脇に山への入り口があった。

鬱蒼と茂った木々をくり抜くように、ぽっかりと開いたトンネルのようだ。

生い茂った葉の起伏が人の顔のように見え、それがわずかな風に揺られて薄ら笑いを浮かべたような気がした。

何度も躊躇する悠美。


それでも意を決すると、その中へと足を踏み入れた。



普段はあまり歩くことのない未舗装の道は、聞きなれない足音を周囲に響かせて、それは何度も悠美の歩みを止めさせた。

ここまで来て、半分以上は後悔している。

ほんの20分も歩けば神社への分かれ道が見えてくるはずだが、そのわずかな時間は果てしなく長かった。

懐中電灯の光をあまり動かさないように注意した。何か恐ろしいものを照らし出しそうで怖いのだ。

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