ダーク&ノイズ
動転したまま立ち上がろうとしてついた手が、何か大きなものに触れた。

その感触は朽ちた木材のようだ。いっぽうの手には藁のような感触があった。

足元に目をやると、薄っすらと足元を横切った木材が見える。

足を掴んだものの正体がそこにあった。

それを確認すると、悠美は胸に詰まった息を吐き出した。障害物に足をつまずかせただけだと分かったからだ。

「びっくりしたあ」

それは昔みた小さな鳥居だった。

あの頃は立っていたが、どうやら朽ち倒れたようだ。

心臓に手を当てると、Tシャツ越しに伝わる鼓動が大きい。悠美はもう泣きたい気分だった。

いや、正確にはさっきから涙がこぼれそうになっていた。

(こんな目に遭うのも……)

そう、希里たちのせいだ。


その怒りがまた立ち上がる勇気を奮い立たせた。

どうやら膝をすりむいたようだ。熱を持った痛みが痺れを伴ってじわりと広がってゆく。

だが、そんな痛みにかまっている暇はなかった。とにかくやることを済ませて、この場から一刻も早く立ち去りたい。

懐中電灯を拾い上げると、平らになった地面を照らした。

雑草がいたるところに生え、荒れ放題なところは以前と変わらない。


しかしあるはずの社殿がそこにはなかった。


一瞬場所を間違えたかと不安がよぎる。しかし、倒れた鳥居があったのは確かだ。

(あっ!)

高くそびえた屋根はそこには無かったが、代わりにうずくまるように地面に伏せた屋根を光が照らした。

確かにあの頃も今にも崩れ落ちそうなほど老朽化していたが──

(地震だ──)
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