ダーク&ノイズ
その根元に無数の大きな石が転がっていた。

(そうだ、たしか──)

ここは石垣になっていたはずだと左右に光を走らせると、至るところで崩れ落ちている。

これも地震の影響のようだ。

そして石垣とともに土が崩れて、この根が姿を現したのだろう。

そんな推測をしながら懐中電灯を目の前に戻すと、その手が固まったように一点を照らして動きを止めた。

悠美の足から這い上がった震えが体を伝い、頭に抜ける。


余韻のように残った震えが小さく歯を鳴らした。


忌むべきもの──

本能が警鐘を鳴らしている。

ここまでいたる道で味わった恐怖などとは比べ物にならない圧倒的な悪意──


それはそこから放たれていた。


(……穴だ)


遠い昔話に出てきたほら穴。


それは作り話だと言い伝えられていた。


しかし、それは確かにあった。


大きく張り出した根と根の間にひっそりと開いた小さな穴。


伝説のほら穴だとすれば、この呪いは成功するかも知れない。

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