ダーク&ノイズ
半信半疑、というより気休めかもしれない。

実際に排除できる確信などほとんど無かった。

それでもここまで来たのは、そんな小さな可能性にでも縋らなければならないという、追い詰められた精神状態だったからだ。

しかし、それが現実味を帯びてくると、今度は恐怖とは違った緊張が走った。


本当に殺せる──


その魅力に不思議と興奮を覚えたのだ。今度は前に出す足に躊躇は無かった。

外から懐中電灯で照らしても中の様子は分からない。

腰を屈めて中に光を差し込むと、木の根に囲まれた中の様子が浮き彫りになった。


その異様な様相に悠美は目を見張った。


小さな部屋は地中に伸ばした木の根に囲まれていた。そこは無数に打ち込まれた釘と藁人形で満ちている。

長い年月で朽ち果てたもの、釘だけになったもの、一体に何本もの釘を打ちつけたもの。


藁人形が無念の声を放っているようだ。


それほど哀れで悲しげで、そして恐ろしげだった。

ただの人形だが、込められた念がそう感じさせるのだろう。

人間の放つ呪いが凝縮された空間がそこにはあった。


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