ダーク&ノイズ
コオーン……


暗い山にくぐもった音が響き渡った。


三日月が雲に隠れ、そよいでいた風がぴたりと止まる。虫たちは一斉に鳴くのを止め、遠くに鳴いていた犬はその口を塞いだ。


コオーン……コオーン……


伝説の音に山が身震いするように静まり返る。それは遠くまで鳴り響いて、寝静まる街にまで届いた。


息の上がった悠美は全て人形を打ち付けると、疲労困憊したようにその場に座り込んだ。

毛糸を束ねて作ったその人形たちは、打ち付けられた藁人形に比べれば数段愛嬌があったが、それでも釘に貫かれるとその愛嬌がかえって気味悪い。

その人形の数を数えてみる。するとその数は四体しかなかった。

(ひとつ足りない)

確かに五体作ったはずだ。間違いは無い。

(もしかして……)

さっき転んだのを思い出した。それしか考えられない。あそこで一体が袋から飛び出したのだ。

< 35 / 250 >

この作品をシェア

pagetop