ダーク&ノイズ
懐中電灯が奥に小さく開いた穴へ向いた。


(もしかして……)


先の見えない穴を凝視して固まる。何かが居るとすればおそらくはこの中だろう。


ズッ……


「きゃああー!」

そこで呪縛が解けたように後ろへ飛びのいた。

(逃げなきゃ!)

穴の入り口に手をかけ、抜けかけた腰を引っ張り上げる。

慌てふためいてなかなか体を外に出すことが出来ない。もたつく間に足を引っ張られるのではないかという恐怖が頭を支配した。

しかし自分の意志に反して、腰から下が穴に入ったままでなかなか抜けない。

入り口付近に打ち付けられた釘がデニムパンツの裾に引っかかった。

耳を伝う何者かが土をこする音、それは今や耳を澄ますことなく悠美には聞こえるほどになっていた。

焦れば焦るほどデニムに絡まる釘。



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