ダーク＆ノイズ
いわゆるいじめっ子のグループは、次々に標的を探しては執拗にいじめを繰り返している。

一学期だけでも二人の中退者が出ているくらいだから、その酷さはうかがい知れるというものだ。


そして今は木下という生徒にその悪意は向けられていた。


そんな中にいる自分を嫌悪しながらも、その輪に入れば安全だという安心感を捨てる勇気はない。


（早く夏休み始まらないかなあ……）


尖った嬌声を上げる友人らと話を合わせながら、そんなことを悠美は考えていた。




「──てことで琢己の友達連れてこれるかなあ？」

学校の帰り道、悠美は彼氏の琢己に聞いた。


いつも二人は待ち合わせをして帰る。その途中の会話でのことだ。

琢己は、しかし渋い顔をした。


悠美は女子高。琢己は男子高に通っている。

男子高の生徒であれば飛びついてくると思っていたので、その反応に悠美は少なからず驚いた。

「お前のダチって……山本とか真下とか冬野とか言う奴らだろ？」

「うん。そうだけど？」

「お前も一緒になってやってんのか？」

「何を？」

「木下裕子、いじめてんだろ？」

「なんで……」

そんなことを知っているかと聞こうとして悠美は思わず口をつぐんだ。


どういう経緯で知ったにしろ、それは自分にとって良い話題ではない。すでに頭の中ではどんな言い訳をするか、その選択が始まっていた。
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表紙・目次

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