ダーク&ノイズ
「そう、これがこの血塗られた伝説の正体だ」

恭一がうんちくを垂れるときは必ず人差し指を立てる癖がある。その癖を見せた恭一は、滔々とそのカラクリを語り始めた。

「ここらに拓かれた村は、この呪いで三回も無くなったらしい」

「無くなった?」

「うん、正確には誰も居なくなったってことだ」

呪いのせいだとすると、とんでもない呪力を伴っていることになる。琢己の額に冷たい汗が滲んだ。

「でもな、呪いで皆死んだんじゃない。殺し合ったんだよ、村人同士で」

「はあ?」

「つまりだな、呪った奴は誰か一人を殺すだけで良い。その後は呪いの音を立てるだけで済むんだ。呪いを解くには誰かを殺さなきゃならない。その見当をつけて誰かを殺す。しかし音が止まなければまた誰かを殺す。次第に村人同士の疑心暗鬼が広がって殺し合いを始めるってわけ」

「そんな簡単に……」

「それが人間の怖さだな。自分を守るためなら他人の命なんて軽いもんだ。ましてやそれが自分を殺そうと疑ってる奴なら、毛ほどの重さも感じねえよ。そして最後の一人になるまで殺し合うんだ」

琢己は頭を抱えた。

もしその通りに事が進むとすれば、悠美がつるんでいる連中はかなりタチが悪いと評判だ。凄惨な事件に発展しないとも限らない。

「それがたくさんの犠牲者を生み出すお凛の呪いの正体ってわけ。昔の村といえば閉鎖された一つの社会だからな、警察のような機関もないし。例えば琢己のクラスでそれが起こったらどうする? まずは犯人探しから始まるだろ。目星をつけたらどうする。そいつを殺さなきゃ自分が死ぬんだぜ。怖い状況だろ?」

念を押すようにそこまで説明すると、恭一はもう一度探るように琢己に問いかけた。

「んで、その呪いをかけたのが誰なのか、お前は知ってんだろ?」

断言するように琢己に詰め寄る。
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