ダーク＆ノイズ
「言わないと俺も助けられないだろ。もし、その連中が呪いを解きにかかったら、そいつは殺されるかも知れないんだぜ」

脅されるような口調に、ついに琢己は重い口を開いた。

「お前も知ってる奴だよ。木下……木下裕子だ」

「木下？　あの……木下か？」

恭一にとっても裕子は知らない仲ではなかった。いや、それどころか親しくしていたと言っても過言ではない。

「木下は……いじめられてた」

「お前の彼女にか？」

先ほどまでの冷静な口調が、怒りがじわりと含まれた語気に変わっていた。

「正確には、その連れもな」

「一緒だろうが。知ってたのか？」

その鋭い質問に、琢己は申し訳なさそうに小さく頷いた。





唐突に悠美の目に光が戻った。

「お客様──」

肩を掴んだまま、店員は尖った口調で「大丈夫ですか？」と言った。そしてようやく悠美は現状を理解する。

急に光に晒されても眩しいという感覚はない。突然現実に引き戻されたような、妙な違和感に包まれている。

ほっとした反面、これで自分も呪いにかかっているという事を再確認すると、もう一度叫びたくなるような恐怖に駆られた。

足元からせり上がって来る体の震えがいつまでも収まらない。
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表紙・目次

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