ダーク&ノイズ
今回は大丈夫だった。しかし、振り返れば誰かが居なくなっているのだ。
はっと思いついた悠美は、席を見渡して人数を確認した。
(のぞみ、真知子、沙理奈──みんな居る)
全員がその場に居た。
正気を取り戻した他の連中も、同じように仲間の顔を見渡している。欠けているものがあるとすれば──
「夏美は!」
のぞみが気づいたようにそう叫んだ。
「そうだ、夏美が」
悠美が真っ先に店を飛び出す。真知子も文句を言っている客を無視して続くと、あとの二人も後を追った。
帰り道はおよそ分かっている。
人が行き交う通路を掻き分けるようにして走りながら、悠美は取り出した携帯で夏美に発信する。しかし、繋がりはするものの、それが通話中になることは無かった。
ほぼ空洞のように大きな吹き抜けを中心に壁際に走る通路。そこをしばらく走って、階下に降りるエスカレーターに四人は足を踏み入れた。
左に寄る買い物客の脇を、激しい金属音を立てて駆け下る。その客の列が途切れたとき、一同は息を飲んだ。
エスカレーターの降り口、昇降板が平らになって吸い込まれる場所に、それはゆらゆらと揺れていた。
思わず口を押さえ、悠美は悲鳴にも似た声を上げる。
「夏美!」
黄色いペンギンのぬいぐるみを取り付けた紺色のバッグ。それはいつも見慣れた夏美のバッグに間違いはなかった。
はっと思いついた悠美は、席を見渡して人数を確認した。
(のぞみ、真知子、沙理奈──みんな居る)
全員がその場に居た。
正気を取り戻した他の連中も、同じように仲間の顔を見渡している。欠けているものがあるとすれば──
「夏美は!」
のぞみが気づいたようにそう叫んだ。
「そうだ、夏美が」
悠美が真っ先に店を飛び出す。真知子も文句を言っている客を無視して続くと、あとの二人も後を追った。
帰り道はおよそ分かっている。
人が行き交う通路を掻き分けるようにして走りながら、悠美は取り出した携帯で夏美に発信する。しかし、繋がりはするものの、それが通話中になることは無かった。
ほぼ空洞のように大きな吹き抜けを中心に壁際に走る通路。そこをしばらく走って、階下に降りるエスカレーターに四人は足を踏み入れた。
左に寄る買い物客の脇を、激しい金属音を立てて駆け下る。その客の列が途切れたとき、一同は息を飲んだ。
エスカレーターの降り口、昇降板が平らになって吸い込まれる場所に、それはゆらゆらと揺れていた。
思わず口を押さえ、悠美は悲鳴にも似た声を上げる。
「夏美!」
黄色いペンギンのぬいぐるみを取り付けた紺色のバッグ。それはいつも見慣れた夏美のバッグに間違いはなかった。