ダーク&ノイズ
聞き込みを続けていた川田と進藤は、失踪した希里の評判が予想以上に大きなことに頭を抱えていた。

車に乗り込むと、汗を拭いながら進藤が愚痴をこぼす。

「こりゃ連中、話せないわけですね」

「無茶苦茶してるな。少年院にブチ込まれてもしょうがないぞ」

集団による暴行だけではない。他の高校の男友達を誘っての乱暴や、口止めとしての裸の写真の撮影など。

もちろん裏を取らなければならないが、それにしてもこれだけの噂となると相当な信憑性が出てくる。

同じクラスの中退した生徒二人が、一人は自殺未遂、もう一人はパニック障害で精神病院に入院しているが、そのどちらも希里らのグループに凄惨ないじめを受けていたと、聞き込みをした生徒は口を揃えていた。

そして先日も一人の生徒が犠牲になったとも。

「この木下裕子ってのが──」

「いや、それはないな」

「そうですか? 動機は十分でしょう」

「動機はな。だが、それだけの仕打ちを受けた人間がすぐに行動を移すことはない。復讐するにしても、まずは恐怖を克服して、それから綿密な計画を立てるはずだ」

「他の二人は完全にシロですし、となるとやっぱり藤崎夏美ですかね」

「まずはそこから突っ込もうと──」

喋りかけた川田の携帯が鳴った。夏物のスーツの内ポケットから取り出すと「はいはい」と、軽い会話が始まる。
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