ダーク＆ノイズ
翌日、教室の中には不穏な空気が流れていた。

いつもは大声で話をしている悠美たちの声が２トーンは低く抑えられている。

やがてドアが開き、目的の人物が教室に顔を見せると、悠美ら六人はのそりと席を立った。


席についた木下裕子はそれに気づき、目に怯えの色を浮かべた。

彼女らの目的は分かっている。

朝から憂うつどころではない。身の危険に晒される恐怖に猛暑の暑さすら感じられなくなっていた。

その木下を取り囲むと、真ん中に立って腕を組む希里が口を開く。見下したような目には憐れみなど微塵も感じられなかった。

「放課後さあ、ちょっと顔貸して欲しいんだよね」

希里の目を避けるようにうつむいた裕子は、返事をためらっていた。

このまま無視しようかとも考えていたが、突然頭に激しい痛みを感じ、顎が上を向いた。

後ろにいた真知子が髪を掴んで引っ張ったのだ。

その恐怖で見開かれた裕子の目に、希里の冷たい顔が映り込む。その悪意に満ちた顔は、念を押すようにもう一度言った。

「顔貸せって言ってんだよ。分かったのかよ？」


怖くて声を出せない裕子は、返事をする代わりに小さく頷いた。

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表紙・目次

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