ダーク&ノイズ
しかし、その軽口はすぐに重いものへと変わった。

「藤崎夏美が失踪した?」

イグニッションを捻りかけた進藤がその手を止めて、事の詳細に耳を傾ける。その進藤に川田が少し激した口調で命令を下した。

「セントラルモールだ、急げ!」

即時に返事を返した進藤がパトライトを屋根に取り付ける。すぐさまけたたましいサイレンが閑静な住宅街に鳴り響いた。

川田はまだ携帯でやり取りを続けていた。

「署長に言ってすぐに捜索を始めさせろ。親の届け出なんざ待ってられんからな。それから、そいつらまだそこに居るんだな。帰すなよ!」

それほど大きな街ではない。瞬く間に付近はパトカーの鳴らすサイレンで満たされる。道行く人々は何事かと、その走り去る方向を見ては邪推した。



ほどなくショッピングモールの前にたどり着くと、すでに一台のパトカーが停まっていた。少女らを確保させるために急行させた一台だろう。

「いくぞ」

「はい」

車を降りた川田は不穏な空気を感じている。先入観は払拭しなければいけないが、これが一介の少女個人による犯行とは到底思えない。もしも背後に何らかの犯罪集団がいた場合、希里と夏美の命に関わることになる。

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