ダーク&ノイズ
昼休みの賑やかな教室から、人の目を避けるようにして裕子の姿が消えた。
バッグもそのままに、だ。
当の裕子はしかし、そのまま学校をフケようとは考えていないようだ。校舎の裏に廻ると、携帯で琢己に連絡を取っていた。
「ねえ、どうしよう?」
語尾を震わせ、目には涙を浮かべている。
この学校には自分が安全でいられる場所など無い。ましてや助けてくれるものなど居るはずもない。
一昨日の夜、手首にカミソリを当てた裕子が最後に思い残したもの。それは琢己であった。
そして勇気を振り絞ってかけた電話が裕子を救い、そして今、唯一心のより所となっていたのだ。
『俺さ、学校フケて迎えに行ってやるから。安心しろよ』
「本当に!」
裕子の顔に希望の笑みが浮かぶ。
これから先のこともあるだろうが、当面の危機を乗り切ればすぐに夏休みがやってくる。
そこまでにトドメを刺されなければ何とかなると思っていた。
「うん、じゃあ後でね。うん……ありがとう」
助けてもらえる安心感と、それから胸がときめく感覚で、この時の裕子に危機感が欠如していたのは確かだ。
忍び寄る気配に全く気づくことはなかった。
熱くなった頬の余韻を楽しむように携帯のディスプレイをしばらく眺め、ようやく閉じようとした時、ひったくるようにしてそれは何者かによって奪われた。
バッグもそのままに、だ。
当の裕子はしかし、そのまま学校をフケようとは考えていないようだ。校舎の裏に廻ると、携帯で琢己に連絡を取っていた。
「ねえ、どうしよう?」
語尾を震わせ、目には涙を浮かべている。
この学校には自分が安全でいられる場所など無い。ましてや助けてくれるものなど居るはずもない。
一昨日の夜、手首にカミソリを当てた裕子が最後に思い残したもの。それは琢己であった。
そして勇気を振り絞ってかけた電話が裕子を救い、そして今、唯一心のより所となっていたのだ。
『俺さ、学校フケて迎えに行ってやるから。安心しろよ』
「本当に!」
裕子の顔に希望の笑みが浮かぶ。
これから先のこともあるだろうが、当面の危機を乗り切ればすぐに夏休みがやってくる。
そこまでにトドメを刺されなければ何とかなると思っていた。
「うん、じゃあ後でね。うん……ありがとう」
助けてもらえる安心感と、それから胸がときめく感覚で、この時の裕子に危機感が欠如していたのは確かだ。
忍び寄る気配に全く気づくことはなかった。
熱くなった頬の余韻を楽しむように携帯のディスプレイをしばらく眺め、ようやく閉じようとした時、ひったくるようにしてそれは何者かによって奪われた。