ダーク＆ノイズ
驚いて顔を上げた裕子の目の前には、親の仇でも見るかのように睨みつける六人の娘の姿があった。

唖然として口を半開きにした裕子の退路を塞ぐようにして六人が周りを取り囲む。携帯を奪ったのは悠美だった。

すかさず発信履歴をチェックしている。

その姿を見て、裕子は必死に声を上げた。

「違うの！　そんなんじゃないの」

動揺する裕子の声を聞き流した悠美の声は、怒りに震えていた。

「てめえ、ふざけんなよ……」

「違う──」

「ナニ他人の男に手え出してんだよ、このヤリマンが！」


今まで積極的にいじめに参加しなかった悠美だが、今回ばかりは状況が違うと、いじめとは無関係だと考えている。


暴力など振るったことは無かった。


しかしこのとき初めて右手で裕子の頬を張り飛ばすと、さらに二発、三発と、逃げようとする裕子を追った。

その裕子の体はすぐに他の五人に取り押さえられ、無防備な顔を悠美の前に晒した。


容赦はない。


悠美の渾身の張り手はやがて拳に変わり、そして今度は裕子の携帯電話を掴んだ手を振り上げた。
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表紙・目次

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