黄龍
三章:追跡者
「そろそろ街に出てみる?」
唐突に久遠が切り出した。
紗里が路地裏に来てから数週間が経過していた。
その間、紗里はずっと病院にいて一度も街へ出ることはなかった。
四神護に見つからないようにするため。
街の人間を怖がらせないため。
本来紗里がいるべき世界へ戻るために
外へ手がかりを探しに行きたかったが、漂流者である証の鮮やかな赤色に変わった瞳は
目立ちすぎてそれが叶わなかった。
本当に戻りたいのか思い悩む紗里の迷いも、街へ行こうとする足を鈍らせていた理由の一つではあるが
久遠達はそれに気が付いていないようだった。
「出てみるって……私、見つかっちゃいけないんじゃないの?」
紗里は驚いて脱脂綿の詰められた瓶にエタノールを注ぐ手を止めた。
ここ最近、紗里は患者がいない時は病院内のちょっとした雑用や、家事を手伝うようになっていた。
心の内を吐露したあの夜以降、紗里はそれまでよりも露暴と一緒にいるようになった。
露暴はこの病院内の雑用のほとんどを担っているため、一緒にいようとすれば必然、それを手伝う形となる。
唐突に久遠が切り出した。
紗里が路地裏に来てから数週間が経過していた。
その間、紗里はずっと病院にいて一度も街へ出ることはなかった。
四神護に見つからないようにするため。
街の人間を怖がらせないため。
本来紗里がいるべき世界へ戻るために
外へ手がかりを探しに行きたかったが、漂流者である証の鮮やかな赤色に変わった瞳は
目立ちすぎてそれが叶わなかった。
本当に戻りたいのか思い悩む紗里の迷いも、街へ行こうとする足を鈍らせていた理由の一つではあるが
久遠達はそれに気が付いていないようだった。
「出てみるって……私、見つかっちゃいけないんじゃないの?」
紗里は驚いて脱脂綿の詰められた瓶にエタノールを注ぐ手を止めた。
ここ最近、紗里は患者がいない時は病院内のちょっとした雑用や、家事を手伝うようになっていた。
心の内を吐露したあの夜以降、紗里はそれまでよりも露暴と一緒にいるようになった。
露暴はこの病院内の雑用のほとんどを担っているため、一緒にいようとすれば必然、それを手伝う形となる。