黄龍
*
男は待っていた。
四神護の来訪を。
黒色の冷たい石造りの床の上にひざまづきながら、
ひたすらに頭をたれて待ち続けていた。
自らの呼吸さえ響くような沈黙の中、時折斜め後方から
カチカチと金属がぶつかる音がする。
男が従えてきた、もう一人のむき身の刀が床に当たる音だ。
長時間一つの体勢を保つのに耐えられなくなったのか、
恐怖に震えているのか。
振り返るわけにもいかず、その真意は男にははかれない。
自分も恐怖に震えそうになる体を懸命に抑えるので精一杯だった。
男は唇を噛み締める。
−−こんなはずではなかった。
本来ならば自分の隣には
捕らえた漂流者がいるはずだった。
それを四神護へ差し出して、手柄として黄龍の支配側へと召し上げられ、
仲間と共に豊かな生活を手に入れるはずだった。
それなのに。
男の脳裏に煙幕の間から覗く、銀髪の少年の姿が浮かぶ。
鮮やかな深紅の瞳。
獲物を連れ去る小柄な背中。
−−漂流者めが。
男の目に怒りがこもり、微かに拳が震えた。
四神護の来訪を。
黒色の冷たい石造りの床の上にひざまづきながら、
ひたすらに頭をたれて待ち続けていた。
自らの呼吸さえ響くような沈黙の中、時折斜め後方から
カチカチと金属がぶつかる音がする。
男が従えてきた、もう一人のむき身の刀が床に当たる音だ。
長時間一つの体勢を保つのに耐えられなくなったのか、
恐怖に震えているのか。
振り返るわけにもいかず、その真意は男にははかれない。
自分も恐怖に震えそうになる体を懸命に抑えるので精一杯だった。
男は唇を噛み締める。
−−こんなはずではなかった。
本来ならば自分の隣には
捕らえた漂流者がいるはずだった。
それを四神護へ差し出して、手柄として黄龍の支配側へと召し上げられ、
仲間と共に豊かな生活を手に入れるはずだった。
それなのに。
男の脳裏に煙幕の間から覗く、銀髪の少年の姿が浮かぶ。
鮮やかな深紅の瞳。
獲物を連れ去る小柄な背中。
−−漂流者めが。
男の目に怒りがこもり、微かに拳が震えた。