トドケモノ 【短】




あれから2日が経った。

はじめは直から着信がはいってたけど、無視してたらこなくなった。


あたし、おかしいの。

もう直とはさよならして、関係なくなっているのに…

自分から無視したくせに…




…着信がないのをさみしいって思ってる。


ものすごく身勝手ね、あたしって。


クスクス自分を笑いながら見やった先は



…『ごめん』の数々。



これ、どうしようか…。



見てると辛い。

でも、でも…こんなモノでも、直がくれたモノだから…


棄てることはできない。

あたしの身体は、そんなことしてくれない。


できるはずがない。



だって、今もこんなに直がすきなんだもの。






ゆっくり立ち上がりそれらに近づく。


ひとつずつ手にとってじっくり眺めた。



ただ手に取っているだけて、もう随分見ていない、直の笑顔が頭に浮かぶ。


もう会えないのに、いまだ鮮やかに思い出せてしまうことが切なくて、冷たい涙が一筋、頬を伝った。



そのとき


ピーンポーン



暗い空気を吹き飛ばすような、やけに明るい音が部屋に響いた。



……だれ?



あたしはぐいっと涙を拭い玄関にむかった。





「…どちらさま?」




扉ごしにそう問う。




< 16 / 20 >

この作品をシェア

pagetop