小さな恋の物語
父の眠る.病室へ入ったとき
母の目から大粒の涙が溢れた。
姉はその時.6年生だったので
目の前の父の姿を見て
『死』というものを
理解できたのだろう.
泣き崩れる母の隣で.
静かに泣いていた。
歯を食いしばり.スカートの
裾をぎゅっと握りしめながら。
あたしは何がなんだか
理解できなくて.
「ままぁ....」
そう言って母の肩に
抱きついたんだ。
母は姉とあたしを
抱きしめると.
「ままがいるから大丈夫よ.」
そう呟いたんだ。