アリスの作り方
ティックとはぐれて、変わった…“王子”と呼ばれる人と出会い別れ……
私はまた迷子になっていた。
私としたことがうっかりどうしてこの状況に陥ったのか聞き忘れてしまったのだ。
途方にくれた挙句、しばらく同じ場所に立っていても起こらない変化に諦めて、とりあえず来た道を戻ることにした。
一本道なのでたぶん戻れるだろう。
確信は無い。
なぜなら私のもといた世界とは違い、まわりに広がっているのは木ばかり。
それなのに確信なんて持てたら、まず迷子にはならない。
進むたびに繰り返していく、似たような景色を不安に思いつつも、私は王子様のことを考えていた。
“僕には感情がないから”
そんな彼の台詞と作り笑いが頭から離れず、そこだけ壊れたテープのように繰り返し流れてくるようだ。
あの心のこもっていない淡々としゃべる口調に無理して変えているような表情……。
それが私にとても痛々しく感じ虚無感のような寂しい何かが私の体に溢れてくるようだった。
「やぁ、アリス」
私が頭の中を整理していたら急に男の人の声が聞こえてきた。