アリスの作り方
「私の名前は縲。鈴村縲。アリスなんて名前ではないわ」
勘違いもいいところだ。
私はそんなおとぎ話の主人公な名前ではない。
だが少年は私の話など全く話を聞いていなく。
「僕はあなたを探していました。僕らの希望――アリス様を……」
輝くような明るい笑顔を振りまきながら先ほどの続きを話した。
「えっ?」
この子何を言っているんだ?
(誰かこの子を落ち着かせてください)
そんな私の願いも裏腹に少年の暴走はとまらない。
「“不思議の国”に戻らなくてはいけません。付いてきて下さい!アリス様」
そういうと少年は私の返事を聞かずに、子供の様に私の右腕を半ば強引にひっぱり何処かへと連れていった。
「だから私はアリスじゃない!」
そういう私の言葉を聞かずに。
途中少年の手を離そうとしたが、見かけによらず力があるのか、それは全く無意味だった。
それからどのくらい経っただろう。
しばらくしたら目的地に着いたのか少年の動きが止まった。
私がまわりを見渡してみると……。
目の前には野原が広がっていた。