アリスの作り方
「ここに飛び込みますので僕にしっかり捕まっていてください」
少年は私と目が合うと、優しく微笑んだ。
私の予想を嫌な意味で裏切らない。
『ごくりっ』
生唾を飲み込みながら再び穴のそこのほうを見渡す。
「い、いいい、いや、む、むむ無理だから」
ここに落ちたら間違いなく死ぬ!
緊張で彼と繋がっている右手を思いきり握った。
「大丈夫ですよ」
そんな私に対して、全く動揺を見せない少年。
かれはふわりと微笑むと私の手を握ったまま穴へと飛び込んだ。
つまり私はその穴に……
……落ちてしまった。
最初はジェットコースターに乗っている時のあの重力に従って落ちていくあの独特の感覚だった。
命の保障があるそれとは恐怖が全く違うが。