アリスの作り方
そんな感覚も最初だけで、段々と落ちるスピードが緩やかになってきた。
そして最後には落ちているのか浮いているのかわからないスピードで下がっていく。
落ちているはずなのにまわりの動きがゆっくり見えた。
臨死体験……
事故みたいな一瞬の出来事でも自分だととても長く感じるらしい、あれである。
たぶん今の状況はそれだろう。
ということは私はこのまま死んでしまうのかなぁ。
そう思った瞬間から、私の頭の中には“死”の一言しか浮かんでこなくなった。
そして段々と意識が飛んでいくようだった。
『…来るべき時が来るまであなたを守る……』
意識がなくなるか、なくならないかというその瞬間、まるで私の意識を戻すように、急に昔の記憶がさかのぼってきた。
これがいわゆる走馬灯ってやつか。
ここまで来るととうとう“死”という言葉が現実になってくる。
「来るべき時が来たら……か、まだ来ないなら助けてよ……」
自分の最期を確信しながら呟いた。