アリスの作り方


「隊長。いつまで隠れているつもり」


縲がいなくなってしばらく経った後、ジョーカーは彼以外誰もいない森の中でポツリと呟いた。


「やっぱり気付いていたか」


そう森の中からため息と共に聞こえた声。
それから直ぐにザクザクと足音が聞こえたと思ったら、ジョーカーの視線の先からスペードが出てきた。


「縲ちゃんは気付いていなかったみたいだけど」


スペードと目が合うと、クスリと微笑みながら言った。


「あいつはただの女だからな」
「そう……?俺にはとても魅力的な女の子だけど」


彼女の事を思い出しているのか、微笑みながら空を見上げると、クスリと切なそうに微笑んだ。


「そう意味ではなくてな……お前も気付いているだろ。救世主って言ったって望んでなったように見えないだろう……。」


ジョーカーの態度に呆れたようにため息をつきながら、だから尚更嫌いなんだと少し不機嫌な表情で呟いた。


「うん……だから、感覚が鈍くなっちゃうんだよね。敵だからとか……」「アリスは……クローバーを殺した」



ジョーカーの言葉をさえぎるように発せられた低音で殺気が感じられる声。

その瞬間静かな森が更に静かになるような緊張があたりを包んだ。



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