アリスの作り方
「じゃあ、俺はアリスを憎むべきではないですね」


けれどジョーカーは、そんなスペードの様子を気にしないようにクスリと笑いながら言った。
何かを考えているのか、その表情は少し苦しそうだった。


「お前もアリスのせいで大切なものを失った」
「だとしても……思い出せない記憶なんかより、縲ちゃんの方が大切だから」


クスリと微笑んだその笑顔がとても眩しく感じ、スペードの目が眩みそうだった。


「俺も……お前の様にあいつの事を忘れてしまえば、楽になれるのかな……。」
「隊長……俺も王子様も記憶喪失だしー、忘れることは簡単なんだよ。けど……それでも、忘れないって事はそれ程大切ってことじゃないのー。」


「……。」


普段の彼から考えられない言葉に、スペードは一瞬時が止まったように呆気にとられた表情でジョーカーを見つめた。

けどすぐにスペードには珍しい笑みに変わり、今度はジョーカーが不思議そうな表情をした。



「だーかーらー、俺はまた記憶を失うことになっても、縲ちゃんと隊長の事は忘れない……絶対」

「お前が忘れても、俺が覚えていてやる。お前の記憶を……。それなら問題ないだろう」




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