アリスの作り方
軍服にはハートにクローバー、スペードとダイヤのマークが見える。


ハートにクローバーにスペードにダイヤ……

まるでトランプみたい。


「トランプのように何も出来なければ良いのに」


ふと頭に浮かんだその言葉をそう呟いた瞬間、私の目の前にいた急に兵士たちがトランプへと変わった。


赤と白の軍服を着ていた兵士はハートとダイヤに、スペードさんのような軍服を着ていた兵士はスペードとクローバーに、そしてクロノスさんもカードへ変わって私の手元に、ヒラヒラとハートのジャックが舞い降りてきた。


“バサバサ”


それから紙のかすれあう音がしたと思ったら、いっせいに他のトランプが襲い掛かってきた。

怖くはないが、少し怯んでしまいペタリと座り込んだ。

トランプがペタペタと私の体に貼り付いてきて気味が悪い。


「ちょ……離れなさい!!」


クロノスさんのカードを持ちながら、くっついたトランプを一枚づつ剥がそうとするが、ペタペタとくっついてしまい剥がれてくれない。


「離れなさい!!」


何度叫んでもトランプは私の体にくっついて離れようとしない。


「だから……。」


“カラン”


思い切り立ち上がり怒鳴ろうとした瞬間、何かが転がる音がした。


「だからなんだ鈴村」




それから聞き覚えのある、少し低めの男の人の声が聞こえた。





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