アリスの作り方
「こんな結婚式ではなかったら僕は……兄さんとアリス様を祝福できるのに」
急にティックの口から発せられた言葉は意外なものだった。
話が一通り落ち着いたせいか、一瞬の静寂が訪れた。
そしたら、急にティックが呟いたのだ。
「な……な、な、な、何を急にいいだすの」
私とクロノスさんの結婚なんて考えられないでしょう。
確かにクロノスさんは感情ないけど優しいし顔も良いけど、私の事なんかどうも思っていないし……。
そう……ぜんぜん思っていない。
女王が決めたことで別にクロノスさんはどうも思っていない……。
「私とクロノスさんは……不釣合い!」
急に現われた心の中を渦巻く感情を取り払おうと強く言うが、それでも不釣合いといった瞬間更に胸が苦しくなるようだった。
「そんなことありません……二人はとてもお似合いです」
“お似合い”
ティックのその言葉で体温が高くなった気がした。
「その……この前の時も兄さんがルイ様をそれに……ルイ様は感情のない兄さんの感情を引き出しています。『ルイの哀しい顔を見ると、胸の中がもやもやするんだ。だからルイを泣かせないでね』先ほど廊下ですれ違った時、兄さんがそう言っていました」
私を……
泣かさないでね……。
「えっ……」
クロノスさんが……
「どうして……」
その言葉がとても嬉しくて何故か涙が溢れてきそうだったが堪えた。
「兄さんもなんでそう言ったか良くわからないみたいでしたが、それでも……兄さんはルイ様の事を思っています」
その言葉を聞いた時に期待と喜びが混じり合ったような妙な喜びが生まれ、心臓の鼓動が聞こえてくるほどに大きな脈を打った。