アリスの作り方
“おはよう”
ジワリとスポンジが水を吸収するように、急に心の中に言葉が入ってきた。
低いような高いような不思議なトーンの感情がないのに何故か私が安心する声。
「ク……ロノスさん……。」
声と共に鏡にいつもの様に無表情なのだが、何となく寂しそうな雰囲気を纏ったクロノスさんが映った。
「可愛いよ」
鏡に映ったクロノスさんが作り笑いをしながら私の頭を優しく撫でた。
「……。」
それがたとえ作り物でも昨日から続く気持ち悪くなりそうなほどの緊張をほぐすには丁度良いものだった。
「あ……りがとう、ござ……います」
それから、胸が痛くなるような切なさと、嬉しさのような感情が生まれ、その感情を落ち着かせながら、ゆっくりと続けた。
「お似合いですね」
そんな光景を見ながらメイドさんが微笑みながら言った。
「……。」
そんな事を言われると余計に恥ずかしくなって、更にクロノスさんの顔を見れずに目線を合わせないように俯こうとした。
「ルイどうしたの」
だがそう言いながらクロノスさんが私のあごを上げる。
前には無表情のクロノスさん。
例え彼が無表情でも彼と目が合った瞬間、顔から湯気でも出てしまうのではないかと言うほど熱くなった。