アリスの作り方
「ドードもう少し速く来れなかったの。僕泳ぐの苦手って知っているくせに……。」
ティックがその一言で場の空気を変えた。
口を尖らせながら子供みたいにドードに話すティック。
不覚にも可愛いと思ってしまう。
どうやら二人は顔見知りのようで、私と話すよそよそしい態度は全く見られない。
……なんか疎外感。
そして2人は私のわからない話をしている。
"スペード"やら"ハート"やら"女王(クイーン)"やら…。
トランプ?と思いつつもわけがわからず、指をくわえて見ることしか出来ない。
私は"アリス"という救世主としてこの国に連れてこられたのに。
蚊帳の外にいるようでそれが居心地悪くて、拗ねた子供のように二人から目線を離し海を眺めていた。
のんびりとしたスピードで進んでいるため風が気持ちいい。
そんな私に気にもとめずまだ2人は話し続けている。
とても深い青い海……澄んでいて綺麗なのだがどこか寂しい。
まるで今の私の心を表現するようだ。