星屑
次には何だかとんでもなく面倒なことになる気がして、あたしはふらふらと購買を後にした。


が、彼はそんなあたしの背中を追ってくる。



「奈々。」


気付けばその呼びかけに足を止めていて、背中越しに勇介の足音が近付く。


授業中で人の姿はない廊下の静けさが、嫌に緊張感を増させてくれる。



「…何か?」


顔だけを振り返らせてみれば、首を傾けてこちらを見るのはこの人の癖だろう。


目を細められると、やっぱり軽薄にしか見えない感じ。


てか、同じ制服を着ていて、ここでこうしていること自体、違和感がありまくるのだが。



「こんなに近くにいたなんて知らなかった。」


「じゃあ、アンタは魔法使いなんかじゃなかったんだよ。」


「でも、あの夜のことは本物だよ。」


あれは互いに割り切った、一夜限りのことだったはず。


単にそれが同じ学校の人だった、というだけのことで、それ以上は何もない。



「あの夜だけで終わったことでしょ?」


「じゃあ、またこれから始めようよ。」


優しさの中に冷たさを含む、不思議な瞳。


その目に見据えられながら、思わずあたしは眉を寄せた。



「終わったこと、って言わなかった?」


「なぁ、これってただの偶然なのかな?」


ふっと笑った勇介と、未だ眉を寄せたままのあたし。



「俺らってこうなる運命だったんじゃない?」

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