星屑
「ヒロトのことだよ。」


言わせたがりなこの人らしい。


言葉にしないことで傷ついて、なのに言葉にしなきゃ確かめられない。


いつもいつもあたし達は、そんな相反する中でもがいてしまうんだ。


ヒロトは強引にあたしをベッドへと押し倒すけど、抵抗しなかったのだから、それは無理やりだとは言わないのかもしれない。


ただ、思考を遮断して、考える隙間さえ取り払ってほしかった。



「奈々。」


歪んだヒロトの顔に、心底安堵する。


手に入れたいのだという欲求を見せつけられる度、彼が見ているのはあたしだけだと確認しているかのよう。


例え狂っているのだとしても、それで良いんだ。


何が正しいのかなんて初めからわからなくて、だから不安になる。


やっぱりあたしは、ヒロトのことを傷つけていたのかな。







行為が終わると、いつも彼は少し甘えるようにあたしの体に絡まってくる。


くすぐったくて、でも嬉しいと感じてしまう。


外はすっかり薄暗くなって、ママが帰って来るまでは、あと一時間といったところだ。



「なぁ、アルバムとかねぇの?」


「そんなもん見てどうすんのよ。」


「お前のちっちゃい頃ってどんなんだったのかなぁ、って思って。」


そう言って、彼は体を離した。


そんなものを見たって面白くはないと思うんだけど。



「わかったよ、持ってくる。」

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