月夜の送り舟
「違うんじゃ、そうじゃないんだ。
お父さんだって送り舟をしてほしいと草葉の陰から願うとるとは思わんか。本当はわしだって・・・。
すまん・・・。許してくれ。わしが悪かったんだ。
頼む。わしに送り舟をやらせてくれんか。わずかばかりでも罪滅ぼしをさせてくださらんか」
カッパは何も言いません。黙ったままです。
よく見るとその目にはいっぱい涙を浮かべていました。
「どうして父があんなにもサイさまの送り舟にこだわっていたのか、やっとわかったような気が致します。
サイさまにはご迷惑をお掛け致しますが、宜しくお願い申し上げます」
今夜の約束をすると、サイはそのまま上流の方へと舟を漕いでいきました。