月夜の送り舟
「ビン、ビイン。ビン、ビイン」
どこからともなく不思議な音が聞こえてきました。
そして、瞬く間に辺り一面にその音は広がっていきました。
振り向くと、見送るカッパたちが頭の皿をはじいています。
それぞれ違う音色を響かせながら、みんな調子を揃えています。
それに合わせるように、サイは櫂を左右に動かしました。
出立です。
花嫁を乗せた送り舟は月明かりに輝く河に星を散りばめながら、ゆっくりと下っていくのでした。
「ビン、ビイン。ビン、ビイン・・」
亡くなったカッパの思いを伝えるように、その不思議な音は辺りに響いていました。