風鈴
やがて空が暗くなった頃、いよいよ花火大会が始まろうとしていた。
「ここは人が多すぎて息苦しいから、さっきの石段のほうへ行こう」
ふたりは、ますます増える人々の間を縫うようにして歩いた。
あまりの人出に、紫が追いつけずにいると、市哉が気づいて戻って来た。
「ごめんよ、歩くのが速すぎたね」
そして、市哉は紫の手を取って、石段へと向かった。
すれ違う人たちが、好奇の目で振り向く。
きっと明日の朝には、町中で噂になっているだろう。