風鈴



「さっちゃん、今日お引越しね」



と紫はしゃがんで、目の高さを幸子に合わせて言った。



それまで笑顔だった幸子の表情が、瞬く間に曇っていく。



「…さっちゃん」



「…もう、ゆかりねえちゃんにあえなくなる?」



「そんなこと……また必ず、会えるわよ」



潤んだ幸子の目に、一瞬言葉が詰まった。



それでも幸子は、紫の言葉を聞いて、うれしそうに笑った。



「またあそべるね!」




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