風鈴



―…子供というのは、なんと無邪気なんだろう。



泣くかと思えば、次の瞬間には、もう笑っている。



こんな日は、その真っ直ぐで豊かな感情に、なおさら胸を締め付けられる。



「…また、遊ぼうね」



あふれ出る思いを抑えるのに精一杯で、紫はそう言って俯いた。



「ゆかりねえちゃん…?」



と、幸子が心配そうに顔を寄せる。



「なんでもないわ」



と言いかけたとき、後ろから、チリン、と音が聞こえた。



はっとして振り向くと、市哉が出て来た。




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