風鈴
視線を下に向けると、幸子が必死に金魚を追っている。
紫はその愛らしい後ろ姿を見て、ため息をついた。
(…この子にも、会えなくなる…)
房子は、そんな紫の気持ちを慮るように、
「なかなか言い出せなくて、ごめんなさい」
と言って、また目を伏せた。
「いいのよ、謝るようなことじゃないわ。…でも、さみしくなるわね」
紫にとって、房子や幸子は家族も同然だった。
両親を失う気持ちを、また味わうのはつらい。
でも事情を知ったからには、引き止めることなどできなかった。