風鈴



「私もさみしいわ。とくに、紫ちゃんの想い人との行方を見届けられなくて、心残り」



房子は、そう言うと、哀しそうに笑った。



「や、やだ。突然なによ」



「だってそうじゃない。紫ちゃん、引っ込み思案なんだもの」



そんなんじゃ進展しないわよ、と房子は紫の浴衣の帯をぽん、と叩いた。



「進展だなんて…」



紫は、突然話が自分のことに及んで、顔が赤くなるのを感じた。




< 16 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop