風鈴



さて大家さんに荷車でも借りてくるかな、と市哉が玄関を開けた。



埃っぽい部屋に、冷たい風が吹き込んでくる。



「寒いなぁ」



と言いながらも真っ直ぐに伸びた背筋は、頼もしかった。



房子たちとの別れから始まる、これからの日々。



でも、もうさみしくはない。



踏み出した先は、明るい光に照らされているから。




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