風鈴



やがて玄関が開く音がして、紫が顔を上げると、扉の隙間から市哉が顔を出していた。



「市哉先生…」



市哉が、手招きをしている。



極度の緊張に襲われて、紫の足元はふらついていた。



それでも玄関に辿り着くと、市哉は優しい声で、



「お父さん、大丈夫だったよ」



と告げた。



「本当ですか?」



紫の顔に、色が戻る。




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