風鈴
縁日が催されている神社は、紫たちの住む長屋から近くにあった。
ほんの少し歩いただけで賑やかな音が聞こえて、紫は心躍った。
傾きかけた日差しが、紫の白い肌を赤く染める。
その熱を冷ますように優しく吹く風が、心地よかった。
「うわぁ、すごい人出ね」
道を行き交う人の多さに、紫は左手につないだ幸子の小さな手を、少し強く握った。
「さっちゃん、はぐれないようにね」
「はぁい」
心ここにあらず、といった様子で、幸子が返事をする。