風鈴
紫は、黙ったままの市哉の隣に、そっと座った。
風鈴を包んでいた古紙を、丁寧にはがす。
せっかくのガラスも、赤く美しい金魚の絵も、この暗闇では、存分に魅力を発揮できていなかった。
それでも、明日にはまたキラキラと輝いてくれると思うと、紫の顔から笑みがこぼれた。
市哉は隣で、そんな紫の表情を、ぼんやりと眺めている。
そして、ぽつりと呟いた。
「…紫ちゃん、最後にうちに来たのって、いつだっけ」
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