風鈴
さりげなく市哉の表情を窺ってみると、どことなく不機嫌な顔をしていた。
ふたりの間を、生ぬるい夜の風が吹き抜ける。
すぐ横を、縁日を楽しみ尽くした子供が駆け下りて行った。
「こら、危ないわよ」
と、母親らしき女性が追って行くのを、紫は見ていた。
(そういえば、さっちゃん見つかったかしら…)
せっかくの縁日だ。
楽しい思い出を作って帰りたいけれど…。
そのとき、目の前に、スッと何かが差し出された。