風鈴



飴細工だ。



市哉が無愛想に、腕を伸ばしている。



「これ…」



見ると、竜の形をしている。



「君にあげようと思って、買ったんだ」



何か片手に持っているとは、ずっと思っていたが…。



飴屋は、紫が房子と別れてから、最初に見た店だ。



自分が通り過ぎた後に、この飴を買っている市哉の姿を想像して、紫は笑った。




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