風鈴
幸子の視線の先には的屋の屋台が連なり、その両側を真っ赤な提灯が、人々を導くように吊り下げられていた。
夕日と提灯に照らされて、そのうえ興奮も入り混じって、幸子の頬は紅潮していた。
「去年も、私たち三人で来たわね」
「そうね。あれからもう一年経つなんて、早いわ」
去年はたしか、花火が始まる前に幸子がぐずり出して、結局長屋に戻ってしまった。
幸子を寝かしつけたあと、長屋の前の広場で花火を見ることはできたが、やはりこの雰囲気の中で見たいものだ。