運命の扉
真中くんのプリントに目を通す。

《誕生日》
5月2日

《趣味》
野球

「真中くんって本当に野球が好きなんだね。」

趣味、野球。
なんだか、素敵だと思った。

「うん、俺の命!」

真中くんは、満面の笑みを浮かべてガッツポーズをした。

「いつからやってるの?」
「小学生3年のとき!なんか、ビビっと来たんだ〜。俺さ、それまでは何やっても続かなかったのに、野球だけは9年やってんの。」

きっと、野球が彼を選んでくれたんだろうな…
純粋な気持ちが伝わってくる。

「井上さんは、何か習いごととかしてた?」
「あたし?」
「そうっ。」
「ん〜。ピアノとバレエはやってたけど…中3で辞めちゃった。」
「バレエって踊るやつ?」
「うん。お母さんが舞台とか大好きで。6歳の時、妹と一緒に。」
「妹って隣のクラスの?」
「あっ、知ってたんだ。」
「うん!井上さんのことなら、完璧★」

いつから、あたしのこと知ってたんだろう…
莉紗と双子だってわかってるし、見間違いでもなさそうだし。

「……あっ、ごめん。」

少しの空白の時間に、真中くんは気まずそうにした。

「ううん。」
「井上さんは、俺のこと知ってた?」
「…ごめんね。今日、知った。」


真中くんがあたしの存在を前から知ってたのに、あたしは知らなかった。
そのことが申し訳なく感じた。

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