運命の扉
体にちょっとした振動が走って、ぬくもりを感じる。
美佳があたしを優しく抱き締めてくれた。
「も〜。なんでそういうこと、早く話してくれなかったの?」
「ごめんね。」
「でも…やっと話してくれた。ずっと心配だったんだよ…莉奈が優斗を見る顔が切なそうだったから。」
あたしは、美佳の顔を見た。
少しだけ瞳に涙が浮かんでる。
「美佳、ありがとう。」
「ううん。ちょっとキツいこと言ってごめんね。」
「大丈夫。」
「教室戻ろうか。」
「うん!」
美佳はとても温かみがある人だ。
他人の喜びや痛みを感じようとしてくれる。
わかっていたのに、自分のしまい込んだ気持ちを抉りたくなくて、
本当は伝えなきゃならなかったことを黙っていた。
でも、気付いてくれてたんだね。
心の扉に出来た隙間に、暖かい風が吹いた気がした。